「ねえ、どうして私を選んだの?」
「どうしてだろうね」
「行く当てなら、他にもあったのでしょ?」
「僕にもよくわからないな」
小さな風が彼女の細い髪をなでていく。
ほのかに春の香りがした。
「そうだ。黄色い帽子をかぶった子らが、並木道を楽しそうに歩いてたんだ。それを見てたら、何故だか君のことを思い出してね」
「それで私のところへ来たっていうの?」
「うん」
「それだけ?」
「そう。それだけ」
小さな雫が彼女の細い体をつたっていく。
ほのかに春の音がした。
「ありがとう」
「なんのこと?」
「私のこと、覚えていてくれて」
「探し出すのに手間取ったけどね」
「それでも、見つけてくれた」
「運がよかっただけさ」
「それじゃ、運命の女神も味方してくれているのね」
「ずいぶん大袈裟だね」
「私にとっては、大きなことなの」
「僕にとっても、決して小さなことではないけどね」
「もしも、あなたが来てくれなかったら、私はただ枯れていくのを待つだけだったわ」
「君が枯れるだなんて、とても想像できないな」
「私だって、枯れるのよ」
「不思議なものだね。枯れた君も見てみたいけど、今は、こうして今の君に会えたことを、運命の女神に感謝するよ」
Photo by Konji Nogitsune
