「のどが渇いたな」
荒野をひとり とぼとぼと歩く ぼく
「誰かいませんか?」
草木の生えないこの土地に いったい何者が住んでいるというのか
ごつごつした大きな岩の影で ぼくは一休みした
「あれはなんだろう?」
無数の線が 大地に描かれている
ぼくはそれを辿っていった
その先には 小さな集落があった
「ずいぶんにぎやかだな」
どうやら 今日は祭りの日らしい
ぼくはその集落で 宿をとることにした
そして祭りにも参加することになった
翌日
その日も祭りが続いていた
どうやら 何日もかけて行う祭りらしい
しばらくこの集落に 腰を落ち着けることにした ぼく
そして その次の日も その次の日も 祭りは続いた
「いつまで続くんだ?」
なぜだか ぼくの疑問に 誰も答えてはくれなかった
そして その次の月も その次の月も 祭りは続いた
そして そのまま 一年がすぎようとしていた
ある朝 ぼくは驚いた
まるで時間が止まっているかのように 集落全体が静まり返り
あの明るく陽気な人々は ただの一人さえ いなくなっていた
祭りの雰囲気が日常となっていたぼくは 目の覚めるような寂しさをおぼえた
夢でも見ているのだろうか と自分を疑い まぶたをこすった
「のどが渇いたな」
再び 荒野をひとり とぼとぼと歩く ぼく
「誰かいませんか?」
草木の生えないこの土地で いったい何物が生きていけるというのか
「ぼくは?」
ぼくはこの荒野で どうやって生きてきたのだろう
ごつごつとした大きな岩の上で ぼくは思い返した
「わからない」
ぼくの歩く道は明確なものではなく いつも直感的に歩いてきた
すると 偶然的に 新たな道を見つけたり 生きる糧を得たりした
だから自分自身 どうやって生きてきたのか いまいちわからない
これからも 直感を頼ることになるのだろう
「よし」
また一歩 足を踏み出す ぼく
「あれ?」
直感的に歩くには どうすればいいんだっけ?
立ち止まった ぼく
直感に頼ることを意識した途端に 動けなくなってしまった
「なんでだ? どうすればいい?」
思い出せ 思い出せ
ぼくはこれまで どうやって歩いてきたんだ?
直感?
直感ってなんだ?
焦りがつのる
ぼくは本当に 直感的に歩いてきたのか?
大きな岩の影で 一休みした時も
祭りの終わった集落で 目を覚ました朝も
ぼくは 平気で 一歩を踏み出したじゃないか
「そうだ」
なにかをわかっていたわけじゃない
なにかを選ぼうとしたわけでもない
ただ それでも 一歩を踏み出したんだ
気の向くままに 立ち止まったんだ
ぼくのなかで 小さな風が吹いていたんだ
心を広げて 胸をふくらませていたんだ
「ふう」
ごつごつした大きな岩の影で ぼくは一休みした
「ようは なんでもかまわない ってことか」
Photo by Konji Nogitsune
