まだ この世のすべてが 黒 一色だった頃
ある日 空をおおう雲が 灰色に変わりました
やがて雲のすきまから 一つ 白い光が顔を出しました
白い光は手をのばして 黒い丘に触れました
そこから煙のように 白いものたちが つぎつぎと現れました
それらはしだいに 草 木 虫 動物へと それぞれのかたちを持ちました
しかし 彼らのかたちは不安定でした
そして彼ら自身 それを知っていました
彼らは 自身のうまれた場所を見つめました
今もあらたに生みつづけている その豊かなる泉を見つめました
つぎに その泉に触れる 白い光の腕を辿りました
そして 空に浮かぶ 白い月を見つけました
彼らは 白い月を見つめました
長い間 見つめました
やがてあるものは かたちを失いはじめました
あるものは消え あるものはだんだん 黒くなりました
そしてあるものはそこから去り 光のまねごとをはじめました
黒い丘に手を触れて そこから何かを生み出そうとしました
しかし かたちの不安定である彼が生み出すものは
彼と同じく どれも不安定なものばかりでした
それでも彼は 生みつづけました
ある日 彼は思いました
この世でひときわ輝く 白い月が生み出したものでさえ
かたちの不安定なものばかりなのだ
自分が生み出すものが 不安定なものであってもしかたがない
しかし 生みつづけていれば
いつか自分も あの輝きに すこしは近づけるかもしれない
そこには 黒い丘をしっかりと踏みしめる 彼のすがたがありました
Photo by Konji Nogitsune
