その虹



「ねえ、虹って見たことある?」 
「うん、……あるよ?」
 唐突な質問にぼくがそう答えたら、「へへへっ」とキミが笑う。
「へ? どうしたの?」
「ふふふーん。じつはその虹ね、わたしがつくったんだ」
「ええっ!」と、ぼくがおどろくのと同時に、彼女は続けてこう言った。
「なんてね! ほんとは、ちょっと手伝っただけ」
 そしてまた「へへっ」と笑う。
「え、でもすごいじゃないか。きっとぼくにはできないな」
「そんなことないよ」と微笑むキミと、やさしい香りがふわりと包む。
「がまんしないでね、ただ泣きたいときに、おもいっきり泣いたらいいんだよ」
――ぼくはそんな声を、彼女の胸の中で聞いていた。